2013年にデビューをして以来、 韓国やアジアのみならず、世界の ハートを鷲掴みにしているBTS。 2021年10月に韓国版『GQ』が、 コロナ禍で約2年ぶりとなったオフライン・コンサートに向けて準備をするメンバーたちに話を訊いた(2021年12月30日発売の2022年1月号に掲載)。 それぞれの日常や喜び、葛藤について語るBTSの現在地とは?
BTSに投げかけた質問に答える形式です。詳細はリンクからGQJAPAN記事へ
JIN「引退をすることになったら、静かな田舎の村に住むのもいいかな」
──世界を魅了する7人が語る「いまの僕」

GQ インターネットで「BTS ジン」と検索すると、英国バンドの「コールドプレイ」が関連検索ワードに表示されます。大きな話題となりました。
JIN(以下JN) ボーカルのクリス・マーティンの大ファンなんですよ。あらためて考えても、コールドプレイとのコラボレーションは本当にすごかったです。大切な時間でした。「Viva La Vida」と「Fix You」といった曲が大好きなのですが、今回「Fix You」をカバーすることになりました! それは特別に嬉しかったです。
GQ いまもとても幸せな表情でした。コールドプレイとはどうやって出会いましたか?
JN 最初はビデオ会議でたくさんの話をしました。どんなスタイルにしたいのか、どんな話を書きたいのか、彼らは僕たちの意見をたくさん聞きながら曲を完成させました。マーティンは韓国に来て録音するときも、作業をするときも、いつも僕たちに質問を投げかけました。「やってみたいことはある?」と。
GQ そのたびになんて答えたんですか?
JN 本当にたくさん話しましたが、記憶に残っているのはマーティンが韓国語で、僕たちが英語で歌ったらどうか、というアイデアでした。マーティンもすごく面白そうだといって録音までしましたが、残念ながら結果的には作品に入らなかったんです。でも、これまでで指折りの楽しい作業時間でした。
GQ それは本当に残念です。2つのグループが音楽を超えて言語まで分かち合う姿を見ることができたのに。
JN そうですね。お互いに発音の問題があって、惜しいけど作品に入れられませんでした。
GQ マーティンにギターをプレゼントしてもらいましたよね? 憧れの人からもらったプレゼントだから嬉しかったでしょう。
JN とても嬉しかったです(笑)。コラボレーションをしたあと、アメリカでマーティンともう一度会う時間がありました。スタジオにマーティンと僕、たった2人でいたのですが、マーティンを見て「ギターがカッコいい」と言ったんです。僕はマーティンのファンだから……彼のすべてがかっこいいんですよ。すると突然、「プレゼントだよ」と言いながらそのギターを僕にくれました。僕はそんな意味で話したわけではなかったので、戸惑いながらも嬉しくて、どうしようもなかったですね。
GQ マーティンからプレゼントされたギターは、いまどこにありますか? とても大切に保管していそうですが。
JN 僕は家の玄関に大切なものを集めているんです。ドアを開けると2メートルほどの大きな「RJ(ジンのキャラクター)」のキャラクターがドンっと立っています。ギターはその隣に置きました(笑)。じつはマーティンにどこに置くのがいいか訊いてみました。それでRJの隣がいいと言ってくれて、悩まずそこに置きました。
GQ 毎回、八色鳥のように変身するジンのステージを見ながら、ふと、BTSではなくジンを音楽のジャンルにたとえてみてはどうだろう? と思いつきました。自分は、ダンス、ポップ、ジャズなど、どんなジャンルに近いと思いますか?
JN 僕の性格を見ると、まあ、限りなく軽快で、楽しいジャンルに近いようなので、ディスコ? ディスコに近いと思います。
GQ では、ボーカリストとしてたとえてみると?
JN うーん、ボーカリストとしては、僕はスキルフルなものよりは感情が濃く滲み出るジャンルに近いと思います。
GQ 「BTSのジン」と「ソロ曲でのジン」はどう違いますか?
JN BTSは7人がひとつになって曲を完成させるので……。誰かに合わせてキーを変えたり、曲を解釈したりすることはできません。でも、ソロ曲ではそれが可能です。自分に合わせた作業、自分がやりたいスタイル、たとえば、自分がもっている声のなかで最も美しい部分にキーを合わせて作ることができます。
GQ ソロ曲ではおもにどんなメッセージを伝えたいですか?
JN じつは慎重になっています。自分が深く共感できなかった話は書けないでしょう。たとえば環境問題です。曲にしたくても、「僕がこの話をしてもいいのか」、「僕は心から共感して、実践しているのか」といった悩みが生まれます。深く考えなければならない問題です。でも、重要な問題はまだたくさんあるので、いつか話したいことがもっと出てくると思います。
GQ 音楽を作るというのは、本当に簡単ではなさそうです。
JN だから、メッセージは明確に決まってはいません。僕は普段から考えごとをしすぎないようにするタイプなんです。ふと、あるメッセージが浮かんだらメモをしておかなければなりません。すぐに忘れてしまうかもしれないので(笑)。だから書きたいテーマを決めるというよりは、即興的に書くタイプに近いです。最近だと、3〜4カ月間歌詞を書いては消して、を繰り返していたら、ある日まったく違うテーマのアイデアが浮かんで、1節を10分で全部書いたことがあります。
GQ ジンに大きな影響を与えたアルバムや曲があるとしたら?
JN 個人的には「FIRE」でした。「好きなように、勝手に生きろ」という歌詞に刺激を受けました。「僕を嫌う人たちはいくら僕がいい姿を見せても結局嫌いだろうし、僕を好きな人たちはそばに残るだろう」というメッセージです。
GQ ミュージシャンとしても、そんな転換期がありましたか?
JN 音楽的に「何かをしてみよう」という意志から生まれた曲は、初のソロ曲である「Awake」でした。会社がチャンスをくれたんです。グループ曲では控え目でいたんです。実力のある人が多いので、欲を出さなかった。だから、ソロ曲の機会が訪れた際には欲を出してみようと思いました。メンバーたちが1つ、2つ、曲作りする姿を見ながら、僕も挑戦してもいいのではないかと思いました。
GQ いつも新しい音楽、新しいパフォーマンス、新しいメッセージを伝えてきました。トレンドを導くいまの位置が、ときにはプレッシャーになりそうですね。
JN そうですね、もちろんそういうときはあります。毎回、同じことをすることはできないから。メンバーとたまに話すことがあります。「最近何を書くべきかまったくわからない」、「僕たちが経験したことは限られていて、似たようなことをしているのに、新しい曲を書くとしたら何について書けばいいのだろう」、「僕が経験したことが正しいのかどうかも考えてみなければならない」といった内容ですね。メンバーたちと話してみると、みんなプレッシャーを抱いているんだな、と思います。
GQ 1カ月ほど休みをもらえたら、どうやって過ごしますか。
JN 考えるだけでも嬉しいです(笑)。でも、思ったよりもそんなに休むことはしなさそうです。パンデミックで2カ月ほど強制的に休養をとりました。意外なお休みにメンバーたちはみんな喜んでいました。でも喜びは2週間しか続きませんでした。休みが1カ月に近づいたころは、みんな不安でした。「これでいいの?」って。おそらく1カ月休むとしたら、合間合間に曲の作業か何かをするのではないでしょうか? 農業をするか、あるいは、暇つぶしのために何か見つけるでしょうね。
GQ 農業ですか?
JN 最近よく考えるのですが、今後僕が引退をすることになったら、静かな田舎の村に住むのもいいかな、と。屋上にバーベキューグリルを置いて、たまにパーティーもしながら、また、庭にはテントも置いて……。「そうやって過ごしたらどうかな?」とよく考えています。
GQ 年賀状にはどんなことを書きますか?
JN うーん、僕がこういう話をしてもいいかわかりませんが、新年を迎える若い友人たちにこう伝えたいです。もうすでにうまくやってきたし、いまもうまくやっているから、もし新年や新生活などスタートに対してプレッシャーがあるなら、少し放っておきましょう。気楽に楽しみながらスタートしてみて、と応援したいです。
GQJAPAN記事 https://www.gqjapan.jp/culture/article/20220322-bts-cover-jin