2013年にデビューをして以来、 韓国やアジアのみならず、世界の ハートを鷲掴みにしているBTS。 2021年10月に韓国版『GQ』が、 コロナ禍で約2年ぶりとなったオフライン・コンサートに向けて準備をするメンバーたちに話を訊いた(2021年12月30日発売の2022年1月号に掲載)。 それぞれの日常や喜び、葛藤について語るBTSの現在地とは?
BTSに投げかけた質問に答える形式です。詳細はリンクからGQJAPAN記事へ
RM「僕もアーミーのファンです」
──世界を魅了する7人が語る「いまの僕」

GQ RMのホームタウンですね。どんな風景を見ながら来ましたか?
RM 川辺北路(カンビョンブクロ)のいつも見慣れている風景を通って……今日はPM2.5がとてもひどくて、何も見えないな、窓を開けたら大変なことになるな、と思いながら(笑)。
GQ 最近、日常がきらめくように感じる瞬間はありますか?
RM あぁ……(目をキラキラさせながら)きらめくという表現をどう解釈すべきかよくわかりません。僕なりに表現すると、こんなかんじです。自分に忠実な瞬間。作業をする時、日課の運動をしながらルーティンを守っている時、僕は元気に生きているなと思えます。いい人と会って会話する時も、そうですね。時計を見る暇もなく、時間が流れるのがもったいない瞬間があるじゃないですか。そんな時に輝いていると感じます。
GQ いまのあなたの表情はとても幸せに見えます。
RM 最近はアートの話をするのが一番楽しくて、昨日は尊敬するヒョン(註:韓国語で年上の男友達という意味)たちとそんな時間を過ごしてきたんですよ。僕たちだけが知っている話をしながらね。
GQ RMが書いた歌詞を読むと、風景のようだと思うことがあります。ただのイメージではなく、私がある空間のなかに入って、立っているような気持ちになるのです。
RM 僕が好きな画家がだいたいそうなのですが、精神的な体験をさせてくれます。作品の前に立つと、ある瞬間に連れて行ってくれるような感じ。余白があるんです。好きなものを何度も見て、追いかけてきたから、僕も似てきたんじゃないかな。さまざまな感覚で音楽の質感を表現し、実践することで、イメージを身につけていくんです。
GQ さすがです。
RM 愛を例に挙げましょうか。愛のなかでも色々テーマがありますよね。「彼女と別れてしまったけれど、愛するその女性にすがりつきたい男性が書いた曲だな」と誰が聴いてもわかるほど単調に感じられるよりは、抽象的な何かを抽出してカタチにしたいという欲が大きいです。抽象というと、ぼやけていて自信がなく、曖昧なように感じることもありますが、絵画の歴史では、具象芸術のあとに抽象芸術が登場しました。具象だけでは表現ができないから、色や形だけ抽出して本質を圧縮したのが抽象だと思います。1+1は2かもしれないけど、そのなかに括弧があるかもしれないし、不等号があるかもしれない……。こうして自由に想像する余地があるほうが、ワクワクするじゃないですか。
GQ 音楽が多様な表情をもつ秘訣ですね。
RM 昔は、「強くなりたい」、「自分自身を証明するんだ」、「すべてを手に入れたい」というような、強い言葉をよく使っていました。そうやっていったん吐き出せば、ストレスはなくなります。でも心のなかでは、どんどんディテールが気になるようになりました。それで、どうやって手に入れるの? 本当にやるの? そもそも「手に入れる」ってなに? その言葉につづく空白部分を考えるようになったんです。
GQ どんなものが〝かっこいい〟と思いますか?
RM あるスタイルがその人に溶け込んで、意図せずに、いや、もし意図したとしても渾然一体になること。どんなにバカげたスタイルでも、自分が快適だと演技すれば、着こなしているように人々を信じ込ませることができます。確固とした自分自身が存在すること。そんなのがかっこいいですね。まだ28歳の僕が、それを追いかけようとするのは傲慢だと思います。まだ未熟者です。
GQ でも、すこしは演技をできるようになりましたか?
RM うーん……うまくないのですが、前よりは簡単になりました。難しい服の前でも慌てないようにしています。慌てていたら、それが写真に写るんですよ。
GQ 自分でも自分がかっこいい、イケてると感じる瞬間はありますか?
RM 何も知らなかった時代には多かったですね。いまは目も、耳も、好みの基準が高くなりました。見る目を養うと自分自身にも厳しくなります。
GQ キム・ナムジュン(本名)だけにあるかっこよさは何ですか?
RM メタ認知が上手です。問題やハプニングが起きた時や、自分自身に対しても、さまざまな角度からそれを見つめることができます。ある現象があれば、その理由を探して、理解しようとします。うまくマインドコントロールもできればいいのですが(笑)。とにかく数え切れないほど検証するのが僕の武器といえます。対象の長所と短所を簡単かつ迅速に探せるんです。「人にウケるポイントはこれ、短所はこれ」といったように。
GQ ドキュメンタリー映画『BREAK THE SILENCE: THE MOVIE』で、あなたは自分の恐れについて告白しました。また、ソロ曲である「Always」には、苦難の時代に書いた歌詞が含まれています。自分の恐れを認識し、受け入れ、記録し、共有することはなぜ重要なのでしょうか?
RM うわあ、これはあまりにも不意打ちの質問ですね。これは、現在進行中のジレンマなんです。なぜなら、共有するという行為は私を「弱いヤツ」に見せる場合があるからです。いまだに多くの芸能人やスター、アーティストが秘密主義を選びます。たくさん傷ついているからかもしれないし、口にしたくないからかもしれません。けれど僕は、ファンに僕たちの「Pros and Cons(長所と短所)」を、そして、自分たちが人間として成長していくなかで背後に伸びる影を共有するのが当たり前だと思います。外から見ればBTSの株はつねに上がっているように見えるかもしれないのですが、決してそうではありません。解散まで考えたという話をあえてする必要はないですが、自分の告白がときに人を驚かせることもあります。ただ、すぐに吐露はしません。感情が通り過ぎて、ろ過されたあとに、その感情を振り返りながら感じる残像を抽出する。それを丁寧に伝えれば「彼らも人間だな」と、人々とアーティストとの距離を縮めることができると思います。それゆえ、適切に思いを吐き出すことは必要だというのが僕の信念です。けれど、正直怖いです。弱腰に見られるのではないかと、この告白がのちに弱点となって逆風を受けるのではと。
GQ 怖いいっぽうで、自由だとも感じますか?
RM 気持ちいいですね。そして、それが礼儀かもしれないと思います。ネガティブな気持ちを隠しながら「僕たちは元気です!」と言うよりもね。でも、恐れを告白する方法は、大人らしく、職業人として倫理的でなければいけません。本やドキュメンタリー、インタビュー、音楽……やっぱり音楽を媒体にするのが一番いいですよね。僕がそうだったように、聴き手がそこから何かを得ることができて、それを自分の人生に適用できるような方法でやりたい。とにかく表現方法についての悩みが多いです。
GQ アーミー(註:BTSのファンの名称)の話が欠かせないですね。今後アーミーとの愛はどんなふうに広がってほしいですか?
RM 僕たちの相互関係や愛がどのように広がってほしいか、というのは、少し危険な考えかもしれないと思います。結局のところ、僕は自分の人生がどんな方向に進むのかさえ知りません。アーミーはいま、特定のタイプとは説明できない集団です。僕たちの愛を考える時、頭に浮かぶ特定のイメージを手放す必要があると思っています。 僕は、アーミーのように一貫して、または、積極的に誰かへの愛情を表現したことも、そんな心をもったこともありません。でも、アーミーを構成する何百万もの個人は、僕をよりよい人間に変えました。だから僕はかれらを心からリスペクトしています。そういう意味で、僕もアーミーのファンです。でも、ひとつこんな願いはあります。私たちが大人になっていく過程で、それぞれのやり方でお互いを応援しつつ、いまの距離を維持していく、平行線のような愛であってほしい。
GQ 「よくやった」、「ありがとう」、「申し訳ない」というたくさんの気持ちを込めてRMとアーミーに言います。「〝수고하셨습니다〟(スゴハッショッスムニダ=お疲れさまでした)」。
RM あぁ、ありがとうございました。(両手をきれいに合わせるRM)スゴハッショッスムニダ。
GQJAPAN記事 https://www.gqjapan.jp/culture/article/20220322-bts-cover-rm